Mainichi
Shimbun
社会に埋もれる
不安や苦しみ、
現場の声を届けたい。
社会に埋もれる不安や苦しみ、現場の声を届けたい。
大学の卒業論文で更生保護について研究した経験から、社会の中で埋もれてしまう不安や苦しみなどの「小さな声」を拾い、一人でも多くの人に届ける仕事がしたいと思い志望しました。また、大学の図書館で表紙がボロボロになった本をめくると、何世紀も前に生きた人々の思いに触れられることを実感し、誰かが存在したことを残す仕事がしたい―と思ったのも理由の一つです。家族や親戚に万が一のことがあっても駆けつけられる場所で働きたかったので、地元の長野県で就職を希望しました。
記事を書くことは難しいと改めて思いました。一番伝えたいことは何か、どんな言葉を当てはめるべきか、情報は裏取りをしたか、誤字、脱字はないか…。先輩たちに教えてもらいながら日々勉強しています。意外だったのは、支社勤務だと記事を直す本社のデスクと顔を合わせる機会がほとんどないということです。入社後、半年が過ぎて初めてお会いした人もいて、驚きました。
下伊那郡の阿智、平谷、根羽、売木村を主に担当しています。子どもたちが農作業に取り組む様子などほっこりする話題から観光、経済対策、村の予算編成などを決める議会など幅広く取材します。首長選や村議選も経験しましたが、記事の内容が重要な1票に影響する可能性があるため、いつにも増して緊張感がありました。
人との良い出会いがあったときです。特に「こんな風になりたい」と尊敬する人と話したとき、取材先に行く途中、「頑張ってるか」と声を掛けてもらったときなど、周りの人たちに支えられて仕事ができていると実感します。また、水力発電所工事の現場など普段入れない場所に行くことができるのも魅力です。腕章一つで、いろんな人、場所を取材できることはとても刺激的で、同時に事実を丁寧に伝えていく責任の大きさも感じます。
人の言動や状況の変化に疑問を持つようになったことです。入社1年目は、警察担当として事件や事故の現場を取材することが多かったのですが、警察署内の人の動きがいつもより多い、普段の受け答えとは違う言い方をした―など、何が起きているのかを把握するヒントとして、ささいなことも意識するようになりました。あとは、納得するまで聞くことです。今でも注意されることがありますが、「分かった気がする」ではなく、当事者の代わりに細部までしっかり説明できるように取材することを心掛けるようになりました。
2019年10月の台風19号の被災地に入って取材をしたことです。災害の影響で取り壊しが決まった団地に住む男性を取材したとき、男性の置かれた苦しい状況を聞けば聞くほど、何を伝えたらいいのか分からなくなりました。それでも、今起きている事実を伝えよう―との思いで先輩記者に助けてもらいながら、なんとか記事にすることができました。後日、男性に会うと「(記事を読んだ)いろんな人に声をかけてもらったよ」と笑ってくれた顔を今でも覚えています。
現場の声を丁寧に拾い、届ける記者になることです。そのために、取材とは直接関係のない会話も、その地で生活する人の声を聴ける機会と捉え、大事にしています。あとは交流施設に置いてあるイベント募集のチラシやSNSなどで情報を集めたり、新聞や本を読んで物事の見方を広げたりしています。
少し足を延ばしただけで、川の音や鳥の声など自然を感じながら一息つける場所があることです。特に秋は過ごしやすくて、紅葉がきれい。取材に向かう途中、色づく木々を見ながらドライブを楽しんでいます。
映画観賞。レビューを見比べて、作品の考察を深めることが好きです。あとは、おいしいご飯を食べてよく寝ること。ただ、食べ過ぎてしまい、久しぶりに会う取材相手から「顔が違う」と言われた経験があり、量はほどほどを心掛けています。
人気バンド「DREAMS COME TRUE」の曲、「何度でも」の歌詞にある「10000回だめで、へとへとになっても10001回目は何か変わるかもしれない」です。上司が「記者の仕事と重なる」と教えてくれた曲です。仕事がうまくいかない時、あと少し頑張ってみようと自分の背中を押してくれます。